「金一切」

    


 江戸時代、「金一両いちりょう」でも「金一分いちぶ」「金一朱いっしゅ」でもなく、「金一切ひときれ」と表現する方法がありました。

  
  金 壱 切 也

右可相渡者也

   両替所

  為替組中

  
 きれ【切れ】 江戸時代、小判・分判などの数え方で金一分を数える語。一切れ、二切れと数える。『駿台雑話』に「乞食は金一切れ貰い候とて」とある。 小泉袈裟勝編著『図解 単位の歴史辞典』、柏書房、1989
 きれ【切れ】 ①・・・ ②一分金。「置き土産とて壱分の二切ふたきれも貰ふこと」<浮・傾城禁短気> 『旺文社 古語辞典』、旺文社、1960

 「金一切」は、「金一分」と同義のようです。 あまり馴染みない表現方法ですが、この数え方を使った紙幣(藩札)があります。

 右の藩札は、仙台藩が安政年間(1854~60)に発行したものです。 先頭に額面が「金壱切也」と書かれています。
 しかし重要なはずの額面文字が、他の文字に比べ何か遠慮気味です。 このとき仙台藩は、「金弍朱」札と「金壱朱」札も同時に発行したのですが、すべて同じ大きさ、同じ書体で、額面だけが違っていたものでした。 こんな紙切れの使用を強制させて申し訳ない、と藩のお役人たちの気持ちがこもっているようです。 実際、この紙幣は人気がなく、額面のわずか2割の相場で通用していたようです。

 2025.11.29