最後の銀貨
現在、世界中の国で、金貨や銀貨が日常的に使われている国はありません。
戦後しばらくの間、銀貨が発行されていた期間はありますが、金貨が発行されることはありませんでした。
現在でも、金貨・銀貨が記念硬貨や特殊目的のために発行されることはありますが、日常的に使うための金貨・銀貨はありません。
では、世界中の国で、日常的に使われる銀貨が最後に発行されたのはいつだったでしょうか。
● 日本の場合
昭和41年(1976年)発行 稲100円銀貨
4.8g 銀品位600
戦後しばらくの間、銀貨は発行されていませんでしたが、昭和32年100円銀貨が発行されました。 鳳凰のデザインのものでした。 戦後初めて手にする銀貨は、白く輝き、ずしりと重いものでした。
2年後に稲のデザインに変更され、その8年後の昭和42年に白銅貨になりました。 銀貨が発行されていたのは10年間でした。
ところで昨今の貴金属相場高騰で、銀の買い取り価格は1g280円くらいになっています(2025年10月)。 この100円銀貨に含まれる銀の価値は800円を超えています!
● アメリカの場合
1964年発行 50セント銀貨
(ケネディ)
12.5g 銀品位900
戦後、アメリカには1ドル(アイゼンハワー)、50セント(フランクリン)、25セント(ワシントン)の3種類の銀貨がありました。
1964年に50セント銀貨はケネディにかわりましたが、そのころから素材の銀の価格が高騰し、1965年に50セントと25セント銀貨は、表面だけ薄い銀で蔽い、中心層は銅というクラッドコインになりました。 表と裏は銀色ですが、真横からみると銅色のコインになったのです。
1ドル銀貨がクラッドコインになったのは1976年ですが、このコインが市中で使われることは稀です。
● イギリスの場合
1946年発行 1シリング銀貨
(ジョージ6世)
2/11ozt.=5.6552g 銀品位500
戦後しばらくの間、イギリスでは、1ポンド=20シリング、1シリング=12ペンスという中世以来の貨幣単位でした。
そして、4ペンス(「グロート」)から5シリング(「クラウン」)まで7種類の銀貨が発行されていましたが、1947年にそれらはすべて白銅貨になりました。
その後も、プルーフ貨や Maundy Set と呼ばれる特殊目的のための金貨・銀貨が発行されていますが、日常的に使われる銀貨としては1946年発行のものが最後です。
なおイギリスが、1ポンド=100ペンスの貨幣単位になったのは、1971年のことです。
● ドイツの場合
1974年発行 5マルク銀貨
11.2g 銀品位625
ドイツでは、5マルク銀貨が1950年から1974年まで発行されていましたが、1975年に白銅のクラッド貨になりました。
またこのほかに、1972年のミュンヘンオリンピックのときに記念10マルク銀貨を発行し、その後毎年のように10マルク記念銀貨を発行していました。 1989年ボン市1000年記念、1993年コッホ生誕150年記念のようにです。
To be continued.
2025.10.19